このページでは、禁煙化推進団体の代表、役員、事務局向けに、団体を効果的に運営していくための基盤づくりのための内容を述べています。

方針の明確化

「禁煙化推進」と一言で言っても、人によりその解釈は異なります。

あるいは、「タバコによる健康被害をなくす」という最終目標は同じでも、アプローチに関する考え方は人により異なります。

典型的な例で言えば、以下の2つの似て非なる考え方です。

  1. 受動喫煙防止が目的(喫煙は受動喫煙さえ生じなければ自由という前提で「完全分煙」を目指す)
  2. 禁煙化が目的(喫煙者もニコチン依存の被害者という前提で「完全禁煙」を目指す)

国内にある禁煙化推進団体でも、上記1の考え方をとる団体は多く、医療従事者ではない者が代表を務める団体にその傾向があります。

団体内で、こうした考えの相違は小さいようで大きく、活動の考え方にも大きな影響を与えるため、活動規約等でしっかり定義していく必要があります。

以下は、とある団体の規約の例です。赤字は筆者注です。

(1)喫煙者を「悪」ととらえず、喫煙者・非喫煙者双方のタバコによる健康被害をなくすことを目指す。

※上述の例でいうと後者にあたり、完全禁煙を目指していく考えです。

(2)「笑顔」で、「ゆる~く」、「協働」する。

※対決型活動なのか、協働的活動なのかも明確にして、会員に知らしめる必要があります

(3)特に、子どもをタバコから守る活動に重点を置く。

※様々あるアプローチの中で、注力する活動は何なのかを明確にします

(4)営利を目的としない。

※当たり前のようですが、営利に走る禁煙化推進関係者が多いため明確にしておく必要があります

(5)特定の政治団体や宗教のために活動しない。

※自らの政治活動や布教活動を禁煙化推進団体を通じて行う者が必ず現れるので、この方針をまず掲げる必要があります

 

目標の明確化

禁煙化推進団体は、設立から数年が経過すると惰性で前年の活動を踏襲するだけの活動になりがちです。

新たな年度を迎えたら、その年度では何を達成したいのか、できる限り定量的で達成基準が測定可能な目標を立てましょう。

例:防煙教育●件以上、一般向けの啓発講演●人以上、●●を禁煙化、●●の陳情採択・・・など

目標が明確になれば、その達成に向けてどのような計画を立てればよいかも明らかになります。

事業の見直し

前述のとおり方針を明らかにし、目標・計画を定めていくと、やるべきことが決まってくると思います。

一方で、禁煙化推進団体において「手を動かせる人」「予算」の関係で、できることは限られている(多くの場合は事務局に依存)ため、事業内容を見直す必要があります。

惰性で毎年行っていることであっても、本当にその活動に効果があるのかを検証し、効果が疑わしければ見直していかなければなりません。

ありがちなのが、以下の2つです。

  1. 「世界禁煙デー前後に講演会を催す」という年次行事
  2. 「受動喫煙防止条例の制定を求める要望書」の提出
    • 筆者は、講演対象のある地域の行政担当者から「毎年同じような受動喫煙防止条例制定の要望書が来る。マンネリ化しているので、もう少し考えられないものなのか。」と言われたことがあります。
    • 本気で条例制定を実現したいのであれば、「医師会を巻き込んだ戦略◎」を参照してください。

会う機会を増やす

年に1回、世界禁煙デー前後に催すイベントでしか会員同士が顔を合わせる機会がない、ということも多いのではないでしょうか。

できるだけ顔を合わせる機会を増やすことが、会員同士の結束力強化につながります。

単に活動だけでなく、禁煙店での食事会や、レクレーションなど楽しいイベントを企画して会員同士が交流できるようにすることも、長期的には活動が活性化する基盤強化につながります。

会員を増やす

どの団体でも同様だと思いますが、熱心に活動するのは会員全体の2割程度です。

ということは、会員全体の母数を増やせば、それだけ熱心に活動する人が増えて、事務局負担が軽減したり団体の活動が効果敵に行えたりします。

また、幽霊会員になりそうであっても「禁煙推進化団体に所属している」という自覚が芽生えるため、何かの機会にアシストしてもらえることが出てきます。(自らが所属している団体での勉強会開催など)

したがって、少しでも多くの方に会員になってもらうよう働きかけることが重要です。

ただし地域団体の場合、その地域に在勤在住でない会員が増加すると公共施設を借用する場合に支障が生じる場合があるため、域外の方はなるべく勧誘しないようにしましょう。

問題会員を強制退会できる仕組みを整える

仲間づくりをする上での留意点◎」でも述べているとおり、禁煙化推進に携わる方々の中には「関わってはいけない」タイプの人もいます。

代表や事務局を疲弊させたり、会員同士の人間関係に亀裂を生じさせたり、場合によっては団体を乗っ取ろうとする人もいたりします。

そういう人を速やかに退会させられるように、規約を整備しておきましょう。

禁止行為として、以下の定めを設けておくとよいでしょう。

1)当団体もしくは他の会員の名誉を毀損する行為

2)当団体の方針、目的に反する行為

3)当団体のメーリングリストに投稿された内容を投稿者の許可なく第三者へ開示する行為

4)当団体会員限りとされた情報やファイルを、許可なく第三者へ開示する行為

5)当団体の活動目的とは異なる社会問題、政治課題、思想信条等に関する自らの主張・活動を、当団体において行う行為

6)アルコールハラスメント、セクシュアルハラスメント、その他のハラスメント

7)当団体の活動で知りえた当団体の個人情報を、自らの営利事業、政治活動、宗教活動等に用いる行為

8)当団体の役員会の了承なく、当団体の名称を用いて対外的にタバコ対策に係る要請、要望、苦情等を行う行為。

9)その他、公序良俗・信義則に反する行為

 

役員の在り方

禁煙化推進団体が、地域の禁煙化を成し遂げるかどうかは、代表や役員の力量にかかっています。

その代表や役員に力量が無いと、いつまでたっても進展は見られません。

一方で力量があれば、瞬く間に進みます。

それだけ代表や役員の力量は、地域の禁煙化推進に大きな影響をもたらします。

その役員の在り方について、以下のとおり述べます。

役員は定年制にしたほうがよい

65歳を超えると、機会を適時に捉えた的確な判断ができなくなり、過去の成功体験にひきずられたものの考えしかできなくなり、感情的になりがちな人がいます。(筆者と親しく交流のある一部の方々はそのようなことはありませんが・・・)

禁煙化推進に携わる多くの人が、こうした年配者の無茶苦茶な采配によって禁煙化推進が却って妨げられていると感じています。

もしあなたが65歳以上で、かつ、禁煙化推進団体の役員となっているのであれば、速やかに退任を申し出て一般会員として役員を全力でサポートする立場にまわりましょう。

そうすれば、「活動を妨げるお荷物な存在」ではなく、喜んでもらえる必要とされる存在になれると思います。

代表は肩書や活動歴よりも、協調性と調整能力

禁煙化推進団体の代表は、地位や肩書で選んではいけません。

また、過去の活動歴で選んでもいけません。

活動歴が長ければ成果を出しているとは限りませんし、成果を過去に出していたとしてもこれからの時代に成果を出せるとは限りません。

代表にふさわしいのは、禁煙に関する知識や活動歴や地位を持つ者ではなく、協調性と調整能力を持っている人柄が良い者です。

禁煙推進化活動にしか居場所をもたないような人ではなく、他にも居場所を持ち活躍している人がよいでしょう。

禁煙推進化活動にしか居場所をもたないような人が代表になると、狭い世界でしか物事が考えられず、また自らの地位を脅かす有能な人物を潰そうとするため、独裁的な運用をするようになり悲惨なことになります。(実際にそうなっている団体があります)

役員は、肩書や実績よりも熱意と実力

肩書があるからといって名前を借りるだけのような役員は、士気を下げ足を引っ張ることになりがちになります。

また、前述のとおり過去の実績があるからと言って未来に向かって実績を出せるかどうかはわかりません。年配の方の場合は過去のやり方(=過激な手法)に固執しがちです。

それよりも、熱意と実力のある人をなるべく選出しましょう。

役員に熱意のある人が多くいると、一体感が増し、活動も活性化します。