基本編を踏まえて、役所や公的施設の要望のポイントについて述べます。

<2019年1月1日更新>

【ポイント1】書面やメールで依頼する

口頭の場合は、記録に残らないので要望したことも記録されず、担当者レベルで「なかったこと」にされてしまいます。

将来的に対応いただきたいようなジャブうちであればともかく、きちんと対処してもらいたい場合には、書面かメールなど記録に残る形で行いましょう。

【ポイント2】回答依頼先を明記する

禁煙化のための要望は、必ずしも受動喫煙を防止することをミッションとする部署に行くわけではありません。

多くの場合、以下のような部署へ回付されます。

  • 屋外 →環境部門
  • 教育機関 →教育委員会
  • 子育て施設 →子育て部門
  • 道路、公園 →環境部門 か 道路・公園部門
  • 役所施設 →総務部門(管財系)
  • 職員の喫煙 →人事部門

これらの部署は、受動喫煙による市民の健康被害の防止よりも、自分たちの職務のほうが優先です。

たとえば環境部門は、環境美化をミッションとしているため、屋外での受動喫煙を防ぐために全面禁煙にすることよりも、環境美化のためにタバコのポイ捨てを防ぐことを目的として喫煙所を設置することを優先しようとします。

こうした部署の性質につけこんで、タバコ産業が環境部門に近づき、喫煙所の提供を行い契約で一定年数撤去できないように縛りをかけています。また、ゴミ拾いのための資材を毎年提供することで「タバコ産業なしに環境部門の事業が成り立たない」ような依存関係を築き上げ、タバコ産業の言うことに環境部門が従わざるをえない仕組みができています。

したがって、別部署に別部署の判断で判断させないようにするために、回答依頼先を健康〇〇課にすることが重要です。ほか、応用編で述べた方法もありますので参考にしてください。

【ポイント3】回答期限を3~4週間後として明記する

基本編のポイント4「回答期限を設定、ただし即時回答を求めない」で述べた通りです。

役所・公的施設の場合は、複数部門が連帯して回答するケースが多く、特に意思決定に時間がかかるので、根気よく待つ必要があります。

【ポイント4】法的根拠の提示

三権分立という言葉にあるように、行政は定められた法律に基づき日々の業務を執行しています。

したがって、法律違反があってはなりません。

そこで、まずは改善してほしい状況が、法律違反や条例違反になるのかどうかを精査したうえで、違反にあたるのであればその旨を指摘するのが効果的です。

健康増進法の改正に伴い、都道府県の受動喫煙防止条例も徐々に定められつつあるので、活用すると良いと思います。

たとえば、改正健康増進法では、飲食店の禁煙化ばかりが話題になっていますが、以下のような条文もあります。

第二十五条 国及び地方公共団体は、望まない受動喫煙が生じないよう、受動喫煙に関する知識の普及、受動喫煙の防止に関する意識の啓発、受動喫煙の防止に必要な環境の整備その他の受動喫煙を防止するための措置を総合的かつ効果的に推進するよう努めなければならない

第二十五条の二 国、都道府県、市町村、多数の者が利用する施設(敷地を含む。次条第二項及び第二十五条の五において同じ。)を管理する者その他の関係者は、望まない受動喫煙が生じないよう、受動喫煙を防止するための措置の総合的かつ効果的な推進を図るため、相互に連携を図りながら協力するよう努めなければならない

 

努力義務ではありますが、要望の根拠のひとつとして、用いることができます。

なお、この条文は努力義務であるため、必ずしも従わなければならないわけではありません。

したがって、この条文のみを根拠として「違法だ」と過激に主張することは「コイツわかってないな」と思われ担当者レベルであしらわれる様な適当な対応をされて逆効果です。

改正健康増進法の狭間にある、コンビニ前の灰皿や、行政や大学の敷地内の喫煙所の撤去を申し入れる際は、「違法だ」と主張するよりも、「望まない受動喫煙をなくす」という法律の趣旨を踏まえてご検討いただくよう丁重にお願いするのが得策です。

行政機関・学校・医療機関における敷地内禁煙や、喫煙所の移設を求める場合の例

健康増進法第28条第5号においては、子どもなど20歳未満の者、患者等は受動喫煙による健康影響が大きいことを考慮し、こうした方々が主たる利用者となる施設や屋外について、受動喫煙対策を一層徹底することを目的として、行政機関・学校・医療機関などは第一種施設として敷地内禁煙が求められております。当該施設は第一種施設であるため敷地内禁煙にする必要があります。
また、特定屋外喫煙場所を設置する場合には、「利用者の望まない受動喫煙を防ぐという改正法の目的に鑑み、特定施設等と同様に受動喫煙を防止するための措置を講ずることが望ましく、また、喫煙をする際は、望まない受動喫煙を生じさせることがないよう周囲の状況に特に配慮しなければならない」ことが求められているほか、厚生労働省のQ&Aや健康局長通知では「近隣の建物に隣接するような場所に設置することがないようにするといった配慮をすることが望ましい」と記載されています。

【ポイント5】子ども、妊産婦も利用する場所であることを前面に出す

「子どもや妊産婦に受動喫煙をさせてはいけない」という認識は、行政に関わる者であれば共通認識になりつつあります。

禁煙化してほしい場所が、子どもや妊産婦も利用する場所であれば、前面に出すと「喫煙者の利用もあるから」というような反論がしがたくなります。

【ポイント6】誠意なき回答の場合

自治体に要望しても、コピペされたような定型文で何もしないような回答がきたり、そもそも回答すら来ずに無視されたりすることがあります。

こうした場合は、議員に相談する方法もありますが別に述べているとおり議員はハードルが高い場合があるため、オンブズマン制度を利用するのも一つの方法です。しかしながら、オンブズマンが喫煙者であったりタバコ問題に関する知見がなかったりすると逆効果になりうる可能性もあります。回答すらなされない場合に使うのがよいでしょう。

【ポイント7】褒める

役所は、市民から叱られることはあっても褒められることはめったにありません。

役所の中の人も、人間なので、褒められるととてもうれしく、やる気が出ます。

評価されていることが他部署や上層部にも伝われば、より一層の禁煙化推進策をとってもらえるでしょう。

そのため、役所がいい仕事(喫煙所の撤去などの禁煙化推進策)をしていたら、電話やメールで褒めまくりましょう!

賛同している人がいることを伝えるのも、立派な「要望」のひとつです。

国の機関は・・・

国の機関は、要望書やメールを送っても返事どころか検討すらしていただけないところが殆どです。

そのため、総務省の行政相談の手続きを用いると第三者的立場できちんと検討したうえで回答をもらうことができます。

行政相談の手続きにより、国立大学内において受動喫煙対策が図られるようになった事例が複数現れてきています。

情報公開手続きを活用しよう

情報公開法や情報公開条例に基づき、行政内部の資料を閲覧することができます。

行政内部での禁煙化推進の検討状況や、タバコ利権とのつながりを確認することができます。

コピーを取ると実費が必要ですが、閲覧だけならば無料です。

筆者も、地域におけるタバコ利権組織の出席者や活動内容を探るため、情報公開請求をしたところ非常に参考になる情報を入手することができました。

近年は、インターネットで簡単に申請できます。(例:東京都の電子申請

詳細は、総務省の情報公開制度のホームページを参照ください。

 

もっと抜本的に役所を動かしたいと思ったら・・・

方針レベルから行政を動かす場合は、対立的な個別の要望ではなく、協働が必要になります。

その協働の方法については、禁煙化推進の進め方において述べます。

もしくは、議員になるか、です。