※2020年10月11日改訂

屋内禁煙がまだ標準ではなかった2000年ごろ、全面喫煙可だったアルバイト先の全面禁煙化に成功したことや、現在の勤務先へのはたらきかけにより先進的なタバコ対策を実施するようになったことなどの筆者の経験を踏まえ、職場の禁煙化の要望方法について、以下のとおりポイントを述べます。

なお、改正健康増進法が施行されて屋内禁煙が原則である昨今、いまだに禁煙でない職場からは「好景気で人不足」なうちに早々に転職するのが最もお勧めです。

  1. 職場が改正健康増進法違反の場合(喫煙可、分煙、喫煙室から煙が漏れ漏れ)
  2. 受動喫煙被害があるが改正健康増進法に反していない職場の場合(飲食店、喫煙可能区域での業務など)
  3. 飲み会等懇親会での受動喫煙対策

1.職場が改正健康増進法違反の場合

職場が喫煙可であったり、不完全な分煙であったり、設置されている喫煙所から煙が漏れまくっているような「改正健康増進法に反している」場合の考え方です。

現在、飲食店や法律で認められた喫煙区域以外は、原則として屋内は禁煙にしなければなりません。

 

直接的な対処

会社の住所を所管する保健所に通報することで、保健所からの指導がなされます。指導に従わない場合は勧告が行われ、それでも是正されない場合は罰則が科されます。

保健所に電話して、健康増進法やその地域の受動喫煙防止条例に反するか、まずは問い合わせてみましょう。

メールでもよいですが、現在コロナ禍で保健所は人員のリソースがひっ迫しているため、返事が非常に遅くなる可能性があります。本来行政とのやりとりはメール等記録に残る形がよいのですが、まずは電話で相談したうえで、記録に残したい場合には電話を録音するか、メールや手紙等で問い合わせるのが良いでしょう。

 

しかし内部通報はリスクが伴う

残業代未払いは労働基準法違反で、改正健康増進法違反よりも遥かに厳しい罰則がありますが、多くの中小企業で遵守されていません。

労働基準法よりも軽い改正健康増進法違反について保健所から指摘があったとしても、その場しのぎの対応(一時的に灰皿を隠す、保健所の職員が来た時だけ禁煙にするなど)がなされる可能性が高く、また、通報した犯人探しや、通報者が判明した場合の意趣返しがなされる可能性が高いです。

すでに経営者との信頼関係が壊れていて一矢報いたい場合には通報するのはよいでしょうけれども、まだ会社内での人間関係が悪化しておらず、タバコだけで困っている場合には、通報により、ことを荒立てることになるため二の足を踏んでしまうかもしれません。

そのような場合には、次のセクションの「受動喫煙被害があるが改正健康増進法に反していない職場の場合」を参考にしてください。

※繰り返しになりますが、そのような違法な職場からは、転職するのが一番です。悶々として対処を考えたり人間関係で悩んだりするよりは何らかの資格の勉強をして、転職につなげたほうが生産的です。

 

受動喫煙被害があるが改正健康増進法に反していない職場の場合

経過措置となっている「既存の経営規模の小さな飲食店」、喫煙目的施設、喫煙区域の清掃等、経営者が改正健康増進法の適用を免れるために合法的に喫煙可という経営判断をした場合は、改善は極めて困難です。やはりそのような場合には転職をお勧めします。どうしてもその職場に残りたい、という場合は以下を参考にしてください。

また、屋外の喫煙所により受動喫煙被害をうけるなど、改正健康増進法には適合しているものの受動喫煙被害が生じている場合には、以下を参考にしてください。

【ポイント1】最初の一歩は・・・

まず最初の一歩は、職場の人間関係を良くすることから始めましょう。

自分の希望を職場でかなえてもらうには、人間関係がよくなければ話すら聞いてもらえません。

上司・同僚・後輩・部下、360度の方々から信頼されるように努めましょう。

また、職場で実績を出す、実績を出すように真摯な姿勢で仕事をすることも重要です。

「ロクに仕事もできないのに文句ばかり言う社員」ようなレッテルを張られてしまうと、禁煙化を要望しても無視されてしまいます。

【ポイント2】禁煙推進の理念と、被害防止を分けて考える

このサイトを見ている人の中には、もともと社会全体の禁煙推進にも熱心な方が多いと思います。

しかしながら、自らの職場での禁煙化にあたってはそのイデオロギーを職場に持ち込まないことが大事です。

受動喫煙の被害防止と、自らの理念の実行は分けて考える必要があります。

これを混同してしまうと、職場で孤立してしまいます。

したがって、一気に理想像に近づけていくことができればよいですが、それが難しそうな場合には”分煙”など段階的な対策もやむなしと考えたほうが良いです。

【ポイント3】職場を禁煙にすることのメリットを整理する

基本編で述べた通り、いまどき禁煙でないような会社において、「自分の健康被害」をいくら訴えても効果がありません。

職場において「自分の権利」を前面に出すことは逆効果です。

その会社の価値観にそって、禁煙にしていくことのメリットを説明していく必要があります。

  • 生産性向上
  • ミスの低下
  • 欠勤者の減少
  • 労災事故発生率の低下
  • 優秀な社員の登用(人不足が叫ばれている昨今において喫煙可の会社にわざわざ就職したい優秀な人はいません)
  • 顧客や銀行ウケがよくなる

メリットについての詳細は、T-PECのサイトに詳しく書いてあるので、精読すると良いでしょう。

 

また、刺さるメッセージとしてもう一つの観点は、「同業他社(ライバル)のタバコ対策の実施状況」です。

経営者は、特に大企業になればなるほど同業他社の動向を非常に気にします。

ライバルと目視している同業他社が行っている施策を調べ、提示すると、受け入れられやすくなります。

【ポイント4】味方を探す→味方の輪を拡げる

職場の禁煙化の権限を持つ責任者に直接訴えてもなかなか効果が無い場合には、その責任者が信頼/寵愛する社員に近づき、その社員と信頼関係を築いて、その社員から責任者へ口添えいただきましょう。

その方法で、私はバイト先を完全禁煙にしてもらうことができました(約20年前)。

また、他の同僚とも信頼関係を築き、同じように受動喫煙で困っている同僚何人かと連帯して、禁煙化のお願いをしていくことが大事です。

労働組合は、労働組合の役員の考え方により左右されます。

喫煙者や、非喫煙者であっても社会的ニコチン依存度が高い者が労働組合の役員をやっていると、職場の禁煙化をすることが却って「労働者の権利を制限する」などと考える人もいるためです。

労働組合に相談する場合は、事前にどんな考えの持ち主か、確認しておくとよいでしょう。

【ポイント5】衛生管理者の資格を取る

一定規模以上の職場であれば、衛生委員会等の設置が義務付けられます。

もし衛生委員会等の組織がある職場であるならば、自身でそれに立候補し、衛生管理者の資格をとったうえで、産業医と連携しながら正面から職場の禁煙化を推進するという方法があります。

衛生管理者の試験は、1~3か月ほどの勉強で合格できるので、キャリアアップとかねて取得を目指すとよいでしょう。

【ポイント6】様々な施策を多角的な視点で

社内禁煙だけでなく、様々な角度で禁煙化推進を行うこともできるため、もう一歩進んだ対策を職場に導入したい場合は、「企業におけるタバコ対策一覧」を参照ください。

飲み会等懇親会での受動喫煙対策

職場が禁煙であっても、飲み会が喫煙可の店で行われることが多いです。

職場のオフィシャルな飲み会を行うほどの大きな店は改正健康増進法の施行により禁煙店となっている可能性は高いですが、法改正後は「禁煙」を標榜している店ながらフロア分煙の喫煙席になったり、加熱式タバコOKの店だったりと、依然として受動喫煙を強いられる可能性も高いです。

いまどき喫煙可のままにしている衛生観念の低い飲食店は、食中毒や新型コロナウィルスに感染するリスクも高いです。

職場の飲み会への対応としては、以下の2つです。

基本、参加しない

タバコの煙が苦手だと主張していても、1度喫煙可飲み会に参加してしまうと、「なんだ、大丈夫じゃないか」と思われてしまいます。

一貫して、参加しないことも受動喫煙を避けるうえで必要です。

何度か断ると、「飲み会には出ないキャラ」として定着します。

代わりに仕事で実績をあげて信頼関係を作ればよいのです。

断る理由が難しい場合は、「飲み会はドクターストップがかかっているので参加できない」などとはぐらかしてしまいましょう。

 

どうしても参加しなければならない場合

そうはいっても参加しないと今後の会社人生に支障が生じる場合は、以下のとおり動きましょう。

  1. 参加が求められる飲み会について幹事を引き受け、完全禁煙店を会場にする
  2. 幹事に対し、完全禁煙店を紹介する

いずれも、職場近くの完全禁煙店をあらかじめ調べておく必要があります。