「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず・・・」

敵のことは、別途「情報収集する」で述べるとおり学んでいくこととして、まずは自身、そして禁煙推進サイドの現状をきちんと把握したうえで禁煙化推進に取り組む必要があります。

自身、そして禁煙推進サイドの現状を確認するうえで、ポイントや心構えをいくつか述べます。

禁煙推進と禁煙化推進は別モノである

医療従事者、特に医師・学者が陥りやすい罠であり、この認識を持っている方は残念ながらごくわずかです。

タバコが人体にもたらす有害性を証明することや禁煙治療・支援で実績をあげていくことと、組織や社会を動かすことは、まったく別モノであり、求められるスキルが全く異なります。

言い換えれば、タバコが人体にもたらす有害性を熟知し禁煙治療・支援のプロフェッショナルであるからといって、決して組織や社会を動かすプロフェッショナルではない、むしろド素人である可能性が高いということです。

まずはこの認識を自ら持つことが重要であり、「自分は、組織や社会を動かすことについては素人である」という自覚を持ち、謙虚にその道の達人の力を借りたり学んだりすることが必要です。

また、重要なポイントとして認識しておかなければならないのは、「禁煙推進には関心があり取り組んでいるが、禁煙化推進には関心が無く取り組むつもりが無い」医療従事者が非常に多いということです。

禁煙推進(=禁煙治療・支援)は、医療従事者の本業に直結しており延長線上でもあります。したがってそのスキルを磨き実績をあげていくことは本業での実績をあげていくことにもなります。

一方で禁煙化推進は本業にはつながらない、儲けにもつながらない活動であるため、「仕事」に直結しない活動に興味・意欲を示す医療従事者は殆どいないのです。

ある学術総会で、禁煙推進に熱心な医師に名刺を渡してSNSで繋がっても良いかときいたところ、「プライベートで禁煙化推進するつもりはないから遠慮させてください」と言われたことがあります。

禁煙関連の学会に所属している医療従事者や禁煙外来に携わっている医療従事者は合計で5000人以上はいると思われますが、そのうち禁煙化推進に携わっている人は5%くらい、さらにその中でも真摯に実績をあげられている人は1~2%くらいと思われます。(データがあるわけではなく、筆者の肌感覚ですが)

逆にその1~2%の中には、日常的に禁煙化推進のことしか考えていない、コアな(おたくな)方々もいるので、そういう方々と繋がれると、活動によりやりがいを感じることができ、禁煙化も進みます。

正論では組織も人も動かない

あなたが自分が勤めている組織や加入している組織で、所属員全員の喫煙率をゼロにしたり懇親会等をすべて完全禁煙の店でのみ催すようにしたりすることが簡単にはできないように、他の組織に禁煙化を働きかけても簡単には実現できません。

「タバコは有害だから」という正論を持ち出しても、様々な事情で検討が難しくなります。

医師や学者は正論・あるべき論を繰り返しぶつけていますが、本当に必要なのは、禁煙化にいたらせることができる道筋を示し、協力して実現していくことです。

正論としてあるべき論を示すだけなら誰でもできます。

「どうやってそれを実現していくか」の道筋を、おかれている事情・環境等に基づき示していくことが重要です。

純粋な気持ちで取り組まないと、失敗する

禁煙化推進の活動は、喫煙者から嫌われ、非喫煙者からも「エキセントリックな嫌煙者」のレッテルを貼られ、ボランティア活動なのに褒められるどころか理解を示されることはあまり多くありません。

禁煙化が少しでも進むことや、稀少かつ優秀な仲間たちと繋がれることに、喜びややりがいを感じられないと心が折れてしまいます

この活動を通じてお金儲けや立身出世を考えているのであれば、やめたほうがよいでしょう。

活動をするからには、純粋な気持ちで取り組むことが必要です。

また、繋がってくる相手が、どういう動機でこの活動に関わっているのかを知ることも大事です。

禁煙化推進活動を通じて名誉欲や金銭欲を満たそうとしている人もおり、そういう人はあなたを踏み台にしていくでしょう。そういう人とかかわらないようにしていくことも大事です。

逆に言えば、名誉欲や金銭欲を満たそうという気持ちを持っていると、仲間はどんどん離れていってしまいます。禁煙化推進に熱心な方々は清貧な方々が多く、そういう名誉欲や金銭欲を満たそうとする人を忌避する傾向があります。

怒ったら負け

禁煙化推進の活動は、思うようにいかないことが多いです。

前からだけではなく、後ろからも矢を撃たれることが多々あります。

役所の担当者や禁煙化推進に取り組む活動家に、日常の人付き合いでは考えられないような失礼な態度をとられることも多々あります。

それでも決して怒ってはいけません。うまくいくものがうまくいかなくなります。

筆者は怒ってしまい、何度もそれで失敗しています。

耐えることも時には必要です。

うまくいかないのは、●●●だから

禁煙化推進がうまくいかないのを、国・行政やまわりのせいにしていませんか?

ある方の名言(迷言)です。

???「それは不勉強というものです」

「禁煙化推進がうまくいかないが、どう進めたらよいか」と他地域の医師会等の医療系団体や、個人の方からよく相談をいただくのですが、話を聞いてみるとほとんどのケースで進め方や段取りに改善の余地があります。

助言をして、「参考になった」とはいっても、助言した通りに実行しようともしない方のほうが多く、結局行き詰っています。

中には、講演した内容や助言について「それはもうやってるが、市が動かないんだよ」と反論してくる人がいます。しかしよくよく話を聞いてみると、上から目線で市に要望書を送っているだけのことがあります。それでは禁煙化はなかなか進みません。

初心に立ち返って、勉強し、行動することが大事です。

いきなり受動喫煙防止条例制定や公衆喫煙所全撤去は無理

禁煙化推進に携わる方の多くが、「受動喫煙防止条例の制定」「公衆喫煙所の撤去」にこだわっています。

確かに、FCTCでも求められており、市民を受動喫煙から守るうえで必要ではありますが、これらは、①首長がもともと意識が高いか、②非常に意識の高い議員がいるか、③進めたい側に優秀なリーダーと軍師がいて関係団体が一致団結し戦略的に動けているか、でないとまず困難です。

多くの場合、いきなり受動喫煙防止条例制定や公衆喫煙所全撤去を行政に求めるのは、小学生にいきなり大学受験させるようなものです。

これら以外にもやるべきことはたくさんあり、一歩一歩進めていくことが遠回りのようで近道です。

その進め方は、このサイトで述べていきます。

可能な限り、身辺を綺麗にする

タバコ販売関係者や喫煙者は、「正論」で言い返せなくなると、人格攻撃をしてきます。

つまり、「この人はこんな言動をしているから、正しいことを言っているようで信用してはならない」という攻撃をしてきます。

こうした攻撃を受けないように、普段から身辺をきれいにしておき、地域でトラブルを起こさないように気を付けましょう。