裁判は、究極の要望です。

筆者は弁護士ではないので裁判の方法については専門家ではありませんが、本人訴訟(弁護士を立てずに自分で裁判を行うこと)を行い数百か所の喫煙所撤去に成功したことがあるため、その経験を述べたいと思います。

金はかからなかったのか?

筆者の場合は、10万円の国家賠償請求だったので、訴訟費用は1000円+切手代のみでした。

弁護士を代理人として立てなかったので、裁判所までの交通費や提出書類の印刷代、切手代等を含めてすべての経費を合わせて合計2万円程度でした。

なお、なぜ「10万円の国家賠償請求」という形をとったかというと、「受動喫煙対策を講じてほしい」といった金銭の請求でないものは「160万円の請求」と同等とみなされて、裁判所に納める手数料が1万2000円になってしまいます。(手数料一覧

「適切な受動喫煙対策が講じられていなかったことによる違法性を問う賠償請求」の形をとることで一番安い1000円の手数料で受動喫煙対策を講じさせることを促す形をとりました。

どれくらい勉強したか?

半月くらいです。意外となんとかなりました。

  1. 別裁判の訴状や、準備書面を参考に読ませていただいた。
  2. 裁判所事務官に手取り足取り手続きについて教えていただいた。
  3. 本人訴訟の本を読んだ

自分が読んだのは、以下の本です。

裁判は要望の方法としてお勧めか?

総論としては「お勧めしません

実際に生じている被害・急迫不正の侵害に対し、裁判以外に防止や被害回復の手段が無い場合に限るべきだと思います。

  • 条例制定や行政の政策方針全体を変えるようなものであれば、協働型の進め方のほうが遠回りのようで早いです。
  • 「ピンポイントで行政が所管する特定の場所を速やかに禁煙化したい」という場合に本人訴訟は有効ですが、あとの活動へ続きにくいです。
  • 「勝とう」と思わず、「一石を投じる」ことを目的とするならば効果はあると思います。
  • 相手が国や自治体ではなく、「個人」や「勤務先」等の場合は、泥沼の戦いになる可能性があるため、実害も著しく発生し裁判以外では解決できないという状況でなければお勧めできません。禁煙化推進活動の一環として喫煙する個人に多額の賠償請求をするスラップ訴訟は論外です。
  • 自治体を訴えると、以降は「協働型」の禁煙化推進活動はできなくなるので、よく考える必要があります。
  • まず勝てません
    受動喫煙訴訟は、弁護士を代理に立てても勝つことは非常に難しいです。
    過去に純粋な受動喫煙被害の裁判で勝訴できたのは、筆者の知る限り、江戸川区の訴訟で5万円、名古屋のベランダ喫煙訴訟で5万円のみです。
    ほか、和解により数百万円の支払いを受けた事例はいくつかありますが、弁護士の力量にも左右されると思います。
  • 受動喫煙被害について一部の団体や禁煙関連の学会に相談すると、すぐに「裁判をしましょう」と煽ってきますが、自分たちの活動の実績にしたいだけであって、被害者の状況に応じた最適解を示しているわけでも勝算があるわけでもないので、決して誘いに乗ってはいけません。

なお、本人訴訟は一度やってしまうと、「こんなもんか」と思ってしまいます。

受動喫煙対策に取り組んでいる人の中には、本人訴訟に慣れてしまい、訴訟をしまくる活動を行っている猛者もいます。

本人訴訟で受動喫煙訴訟する場合のポイント

広く知れ渡るようにする

裁判はお金が目的ではなく、受動喫煙環境をなくすために一石を投じることを目的として行う以上、このアクションが広く知れ渡り、社会問題として認知されることが必要です。

そのため、ホームページを公開したり、マスコミに報道してもらうなどして知れ渡るようにしましょう。

  • ホームページは、たとえば、WIXJimdoを使うと簡単に無料で作成できます。
  • マスコミは、好意的に報道するマスコミと、悪意たっぷりに報道するマスコミ、両論併記で批判するマスコミなどがあります。好意的に報道してくださる方は、個人的に何人か知っているのでお知らせください。
  • 報道されると、悪意のあるメールなど嫌がらせをうけることがあるので、本名、電話、住所などは非公開としておいたほうが良いです。

喫煙所等が撤去されたら速やかに訴訟を取り下げる

提訴後に、喫煙所が撤去されることがあります。

その場合は、速やかに訴訟を取り下げましょう。

勝訴自体は前述のとおり非常に難しく、判決ではほぼ敗訴になるため、それが判例となり他へ波及しないようにするため、すぐに取り下げて「実質勝訴」となったことを広く知らしめると効果的です。

家族の理解を得る

法廷で係争中であることは、多かれ少なかれ地域に伝わります。

家族の理解が無いと、中には「世間体が悪い。家族の近所づきあいに悪影響がある」と思われてしまい、裁判を進めていくことが難しくなります。

提訴前に、家族とよく話し合うことが必要です。

他に本人訴訟で喫煙所を撤去できた例